
近年では、伝統的なお墓や仏壇にとらわれない「手元供養」が注目されています。
特に、夫婦で供養について話し合い、生前から準備を始める方も増えており、「夫婦で手元供養できるの?」「両親や先祖の供養も可能なの?」という声が多く聞かれます。
本記事では、夫婦向けの手元供養品の種類と選び方から、手元供養を行う際の注意点まで、分かりやすく解説しています。
手元供養を検討しているご夫婦は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
夫婦で選ぶ手元供養とは?基本知識を理解しよう

まずは、手元供養についての基本知識を理解しましょう。
- 手元供養の定義と特徴
- 夫婦が手元供養を選ぶ理由
- 従来の供養方法との違い
手元供養の定義と特徴
「手元供養」とは、故人の遺骨の一部を専用の容器に納め、自宅など身近な場所で供養する方法です。
従来のお墓や仏壇による供養とは異なり、故人をより身近に感じながら、日常生活の中で供養できる点が最大の特徴です。
夫婦で手元供養を選ぶ場合には、お互いの両親や共通の先祖を同じ空間で供養することで、家族の絆をより深く感じられるという利点があります。
また、どちらか一方の実家が遠方にある場合でも、自宅で日常的に供養できるため、距離の問題を解消できる点も大きなメリットです。
夫婦が手元供養を選ぶ理由
夫婦が手元供養を選ぶ主な理由は以下の通りです。
- 住環境の変化による物理的制約
- 核家族化による供養継承の困難
- ライフスタイルの多様化による時間的制約
住環境の変化による物理的制約
現代の住宅事情では、従来のように仏壇を設置することが難しくなっています。
特にマンションやアパートに暮らす夫婦にとって、大型の仏壇を置くスペースを確保するのは簡単ではありません。
そのため、コンパクトで柔軟に設置できる手元供養が適しているのです。
核家族化による供養継承の困難
核家族化の進行により、先祖供養の方法を親から子へ受け継ぐ機会が減っています。
実家を離れて独立した夫婦の中には、「どのような供養をすればよいのか分からない」と悩むケースも少なくありません。
こうした背景から、形式にとらわれずに供養できる手元供養が選ばれるようになっています。
ライフスタイルの多様化による時間的制約
共働き世帯の増加により、夫婦ともに時間的な余裕がない家庭が増えています。
定期的なお墓参りは、移動時間も含めて半日〜一日がかりになることもあり、忙しい夫婦にとって大きな負担です。
その点、自宅で無理なく故人を偲べる手元供養は、多忙な現代の夫婦にとって大きな魅力となっています。
従来の供養方法との違い
従来の供養方法と手元供養の違いをまとめた表がこちらです。
比較項目 | 従来の供養(お墓・仏壇) | 手元供養 |
---|---|---|
供養の頻度 | 月命日や年忌法要など特定日 | いつでも |
身近さ | 決められた場所での供養 | 日常生活の中で自然にできる |
継続費用 | 年間管理費、交通費など | ほぼ不要 |
場所の制約 | 霊園や寺院などの固定場所 | 特になし |
設置スペース | 大きな仏壇や墓地が必要 | コンパクトで省スペース |
承継の問題 | 承継者が必要 | 夫婦で柔軟に対応できる |
夫婦向け手元供養品の種類と選び方

夫婦向け手元供養品の種類と選び方を解説していきます。
それぞれ特徴が異なるので、自分たちに合う手元供養品を選びましょう。
- ミニ骨壷
- 遺骨ペンダント
- ミニ仏壇・供養台
ミニ骨壷
ミニ骨壷は、手元供養のもっとも基本的な形態で、故人の遺骨の一部を納めて自宅に安置します。
素材は、陶器や金属、ガラス、木材など多様です。
モダンなインテリアにはガラスや金属製、和風の住まいには陶器や木材がよく合います。
住空間に調和するデザインと、夫婦の価値観に合った素材選びが重要なポイントです。
遺骨ペンダント
遺骨ペンダントは、故人の遺骨の一部をペンダントに納め、常に身につけて供養する方法です。
外見は通常のアクセサリーと変わらないため、日常生活で自然に故人を身近に感じられます。
夫婦で選ぶ場合は、お揃いのデザインや、男性用・女性用でデザインを変える選択肢があります。
素材は、プラチナやゴールド、シルバーが主流です。
デザインによってはビジネスシーンでも違和感なく着用でき、重要な場面で故人の存在を感じられるのが大きな魅力です。
ミニ仏壇・供養台
ミニ仏壇や供養台は、従来の仏壇を小型化した手元供養の方法で、ミニ骨壷と組み合わせてより本格的な供養空間を作ることができます。
現代の住環境に合わせてデザインされているため、洋室にも和室にも調和します。
サイズはコンパクトなものから本格的なものまでさまざまで、夫婦で使用する場合は、複数の位牌や写真を置けるスペースのあるタイプが人気です。
長期間使用するものなので、夫婦で十分に相談して選ぶことが重要です。
先祖・両親の手元供養を夫婦ではじめる手順

先祖や両親の手元供養をはじめるには、分骨の手続きや供養空間の準備など、いくつかのステップを順に進める必要があります。
夫婦で協力しながら、必要な手続きを適切に行いましょう。
- 分骨の方法と手続き
- 手元供養品の購入時のポイント
- 供養空間の設置とお供え方法
分骨の方法と手続き
手元供養をはじめるには、まず分骨の手続きが必要です。
「分骨」とは、故人の遺骨の一部を取り分けることで、火葬場や墓地管理者に申請すれば、分骨証明書の発行を受けられます。
正式な手続きを行うことで、トラブルなく手元供養が可能になります。
手続きの方法は、火葬前と火葬後で異なります。
分骨を希望する場合は、火葬前に火葬場へ申請し、火葬後に分骨証明書を発行してもらうのが一般的です。
火葬場によっては事前予約が必要な場合もあるため、早めの確認が重要です。
多くの火葬場では分骨用の小さな骨壷を用意してくれるので、あらかじめ相談しておくと安心です。
すでに納骨済みの場合は、墓地管理者の許可を得たうえで、改葬許可証の申請が必要になります。
分骨を目的とする場合でも、自治体によって対応が異なるため、事前に確認しておきましょう。
手元供養品の購入時のポイント
手元供養品を選ぶ際は、まず夫婦でどのような供養スタイルを希望するかを話し合うことから始めましょう。
日常的に目に触れる場所に置きたいのか、外出時にも身につけていたいのかによって、選ぶべき手元供養品は変わってきます。
購入時において重要なポイントは、アフターサービスの充実度です。
手元供養品は長期間使用するものなので、修理やメンテナンスのサービスが整っている販売店を選ぶことが大切です。
また、万が一破損した場合の保証内容もあらかじめ確認しておきましょう。
価格については、夫婦で予算を相談して決めることが大切です。
高価なものが必ずしも良いとは限りません。
夫婦の価値観と予算に合った商品を選ぶことが重要です。
供養空間の設置とお供え方法
手元供養品が準備できたら、次は供養空間の設置です。
設置場所は、夫婦が毎日手を合わせやすく、直射日光や湿気を避けられる場所を選びましょう。
リビングの一角や寝室の静かな場所などが人気です。
お供えの方法は従来の仏壇と基本的には同じですが、スペースの制約があるため、小さなお花や線香、お水程度にとどめるのが一般的です。
毎日新しいお水をお供えし、定期的にお花を替えることで、清浄な供養空間を保つことができます。
夫婦で手元供養をする際の注意点とデメリット

夫婦で手元供養を行う際は、以下の注意点とデメリットを把握しておくことが重要です。
- 家族や親族との理解と合意
- 残った遺骨の取り扱い
家族や親族との理解と合意
手元供養を始める前に最も重要なのは、家族や親族の理解と合意を得ることです。
特に、故人にほかの子どもや兄弟姉妹がいる場合は、事前に十分な説明と相談を行う必要があります。
手元供養は比較的新しい供養の形であるため、理解を得るまでに時間がかかることもあります。
そのため、説明の際には、「手元供養が故人を粗末に扱うものではなく、より身近に感じながら供養したいという想いから選択した」ことを丁寧に伝えましょう。
また、分骨によって遺骨のすべてを持ち帰るわけではなく、大部分はお墓に納骨することを明確に伝えることも大切です。
もし反対意見が出た場合は、焦らずに時間をかけて話し合いを行いましょう。
手元供養の意義や、法的に問題がないことを資料などを用いて説明し、段階的に理解を求めていく姿勢が大切です。
具体的な説明方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
手元供養は良くないといわれる理由とは?誤解を解く話し方やメリットを解説
残った遺骨の取り扱い
手元供養では、遺骨の一部のみを自宅に持ち帰るため、残った遺骨の取り扱いについても事前に方針を決めておく必要があります。
多くの場合、残りの遺骨は従来通りお墓に納骨しますが、お墓がない場合は、
- 新たにお墓を購入する
- 永代供養墓を利用する
- 合祀墓(ごうしぼ)を選ぶ
といった選択肢を検討することになります。
また、夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、残された配偶者が手元供養品をどのように管理するかも大きな課題となります。
将来的に、
- 子どもに引き継ぐのか
- 自身の死後に一緒に埋葬するのか
など、具体的な計画を立てておくことが望ましいです。
まとめ:夫婦や家族で話し合いながら、自分たちらしい手元供養を

手元供養は、夫婦で供養について向き合い、話し合いながら自分たちらしい形を選べる柔軟な供養方法です。
お墓や仏壇がなくても、家族の想いや絆を大切にできることが大きな魅力といえるでしょう。
両親やご先祖の供養も含めて、住まいや暮らしに合ったスタイルで取り入れることができるため、世代を問わず多くの方に選ばれています。
これからの時代にふさわしい、心に寄り添った新しい供養のかたちとして、ぜひ一度ご家族で検討してみてはいかがでしょうか。